労働条件セルフチェックリスト ⑨苦情相談窓口

2021.06.14

労働条件セルフチェックリスト第9回目のテーマは「苦情相談窓口」です。

今回説明する相談窓口は「ハラスメント」と「パート・有期雇用労働者」に関するものとなります。相談窓口としてまとめて説明していますが、根拠としている法律は異なっています。それぞれの窓口設置の趣旨目的を把握して、実効性のあるものとすることが大事です。

 

ハラスメント相談窓口の設置義務

2020年6月に施行された労働施策総合推進法により、職場のパワーハラスメントに関する相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備や雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されました(中小企業は2022年4月から義務化となります)。この体制の整備にあたるのが「ハラスメント相談窓口」の設置となります。

この窓口の相談対象はパワーハラスメント(パワハラ)となりますが、職場で発生する恐れのあるハラスメントはパワハラに限らず、セクシュアルハラスメント(セクハラ)やマタニティハラスメント(マタハラ)など多岐にわたります。

そこで、厚生労働省のパワハラ防止指針等においては、「セクハラ等の相談窓口と一体的に、職場におけるパワハラの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましい。」と、ハラスメント全般の相談窓口とすることが望ましいとしています。

実際、複数のハラスメントが絡む場合もありますし、それぞれ別々の窓口を設置するより効率的かつ包括的な対応も可能になります。特に限られたリソースで対応しなければならない中小企業においては、一元的な窓口とすることが情報管理の観点からもメリットが大きいと考えます。

なお、前述の通りパワハラは労働施策総合推進法、セクハラは男女雇用機会均等法、マタハラは男女雇用機会均等法と育児・介護休業法を根拠としています。

 

ハラスメント相談窓口の運用

相談窓口を設置する際の体制は、部署などの組織でも担当者としての個人でも問題ありません。社内だけでなく、外部に相談窓口を設置することも可能です。どこに相談すればよいか、明確に周知されていることが重要です。もちろん、安心して相談できる環境作りや、担当者への研修等も実効性のある窓口とするには欠かせません。

相談の大まかな流れは以下のようになります。

①相談者からのヒアリング
②事実関係の調査確認
③再発防止策と処分の検討
④調査結果の説明と処分、再発防止策の実施

ヒアリングの際は、秘密を厳守することや不利益な取り扱いを受けないことを伝え、安心して相談できる環境を作ります。また、事実関係を聞き取ることに努め、この段階で見通しや断定的なことは安易に伝えないようにします。相手側のヒアリングについても、できる限り事実関係を確認することに努めるようにします。

ハラスメントの事実が確認された場合、再発防止策や処分の検討と実施を行います。事実が確認できなかった場合でも、調査結果を相談者に説明することが大事です。結果をフィードバックすることで相談窓口が機能し、会社としてハラスメントを放置しない姿勢を示すことができます。

なお、処分に関しては就業規則が根拠となりますので、どの懲戒規定が適用となるのかの適切な運用が求められます。

 

パート・有期雇用労働者の相談窓口の設置義務

パートタイマーや有期雇用労働者を雇用する企業は、「短時間・有期雇用労働者の雇用管理の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を設置する義務があります。これは、パート・有期労働法で定められており、いわゆる同一労働同一賃金に関連して待遇に関する相談や苦情を受け付けることになります。

パート・有期雇用労働者に交付する労働条件通知書にも、この相談窓口について明示する必要があります。

 

パート・有期雇用労働者の相談窓口の運用

ハラスメント相談窓口と同様に、相談窓口を設置する際の体制は、部署などの組織でも担当者としての個人でも問題ありません。

パート・有期雇用労働者は、正社員等通常の労働者と比べて就業の実態が多様で、それに伴い待遇についても通常の労働者と異なる場合が多くなります。この待遇差に関する疑問や不満の解消のため、この相談窓口で説明義務を果たすことになります。

そのため、相談窓口を設置することだけではなく、事前に待遇差に関する精査や検討を行っておくことが肝要となります。

 

社労士は、相談窓口の設置・運用や就業規則、労働条件通知書についてのアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。