労働条件セルフチェックリスト ⑧高齢者雇用

2021.06.07

労働条件セルフチェックリスト第8回目のテーマは「高齢者雇用」です。

超高齢社会の到来と労働人口の減少の流れの中、高齢者雇用は企業の重要かつ身近なテーマになってきています。
また、高齢労働者側の就業意識も経済的な理由だけでなく生きがいや社会参加など多様化してきています。

そのような高齢者の雇用について、どのような対応が必要か確認してみましょう。

 

1.65歳までの雇用機会の確保

(1)60歳以上定年

従業員の定年を定める場合、その定年年齢は60歳以上とする必要があります。60歳未満の定めは無効となります。

 

(2)高年齢者雇用確保措置(65歳までの雇用確保措置)

定年年齢を65歳未満に定めている場合は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります。

「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。現在この制度の対象者は、希望者全員を対象とすることが必要となっています。

なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。

 

(3)70歳までの就業機会確保(努力義務)

改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました。努力義務として、70歳までの就業機会を確保することなどが規定されました。
定年を65歳以上70歳未満に定めている場合や65歳までの継続雇用制度を導入している場合は、下記のいずれかの措置を講じるように努める必要があります。(義務ではありません)

①70歳までの定年引き上げ
②定年制の廃止
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※④⑤については過半数組合等の同意を得た上で、措置を導入する必要があります。

 

2.中高年齢離職者に対する再就職の援助

(1)中高年齢者の再就職援助

解雇等により離職が予定されている45歳以上65歳未満の従業員が希望するときは、求人の開拓など本人の再就職の援助に関し必要な措置を実施するよう努める必要があります。

 

(2)求職活動支援書の交付

事業主は、解雇等により離職が予定されている45歳以上65歳未満の従業員が希望するときは、「求職活動支援書」を作成し、本人に交付する必要があります。

 

3.高年齢者雇用に関する届出

(1)高年齢者雇用状況報告

常用労働者が31人以上の企業は、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用に関する状況(高年齢者雇用状況報告)をハローワークに報告する必要があります。

 

(2)多数離職届

1カ月以内の期間に45歳以上65歳未満の者のうち5人以上を解雇等により離職させる場合は、あらかじめ、「多数離職届」をハローワークに提出する必要があります。

 

4.継続される有期雇用労働者の無期転換申込権の特例

有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる「無期転換申込権」が発生します。(労働契約法)

ただし、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者と、定年後引き続き継続雇用される有期雇用労働者については、一定の条件と手続きのもとで、「無期転換申込権」が発生しない特例があります。(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)

継続雇用の高齢者に関する申請については、「第二種計画認定・変更申請書」を都道府県労働局へ提出し、雇用管理に関する措置等の計画が適当である旨の認定を受けることが必要です。

 

社労士は、高齢者雇用に関するアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。