労働条件セルフチェックリスト ⑩就業規則

2021.06.21

労働条件セルフチェックリスト、最終回となる第10回目のテーマは「就業規則」です。

常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添付して、労働基準監督署へ提出する義務があります。しかし、その職場で働くルールが明確になっていることは、労使双方にメリットがあります。作成義務がない少人数のうちでも、就業規則を整備することをお勧めします。

 

就業規則の記載事項

就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。このほか、使用者において任意に記載する事項もあります。

絶対的必要記載事項は次のとおりです。
① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的必要記載事項は次のとおりです。
① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品などの負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰、制裁に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項

就業規則は、その職場の実態に合わせたものを、労働者に明確に伝わるように記載する必要がありますので、各記載事項をよく検討して作成する必要があります。
なお、就業規則の内容は、法令及び当該事業場において適用される労働協約に反してはなりません。また、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となります。

 

就業規則の届出

就業規則は、企業単位ではなく事業場単位で作成し、届け出なければなりません。

常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則作成や変更の都度、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
なお、「常時10人以上」の考え方についてですが、一時的に10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用している場合も当てはまります。そして、その労働者には、パートタイム労働者やアルバイトなども含みます。

就業規則は、その職場の働き方についての決め事ですので、その内容を労働者がまったく知らないといったことがないように、就業規則の作成・変更の際は、事業場における過半数組合または労働者の過半数代表者の意見を聴き、意見書を提出してもらいます。もちろん、届出義務のない事業場においても、作成・変更の都度、意見聴取の機会を設けることは大事です。

 

就業規則の周知

就業規則は、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければなりません。

周知方法の例は次のとおりです。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
② 書面で労働者に交付する
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

就業規則は、作成・届出だけでは効力は発生しないと解されています。せっかく作成・届出をしても、机の中にしまいっぱなしでは無効となりかねませんので注意しましょう。

 

最初にも記載しましたが、就業規則を定めることは、労使双方にメリットがあると考えます。
労働者は勤務や服務規律などの職場のルールや賃金等の待遇条件の基準を理解したうえで働くことができ、使用者はこれらの事項に関するトラブルの発生を未然に防止することができます。

就業規則は一度作成しておしまいではありません。常に職場の状況に合わせて見直すことが重要です。また、就業規則に記載する事項に関連する法令は随時改定されています。定期的な見直しとともに、法改正にも忘れずに対応しましょう。

社労士は、労働社会保険の専門家です。職場の実態に合わせた就業規則の作成代行やアドバイスを行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。