労働条件セルフチェックリスト ⑤労働社会保険

2021.05.17

労働条件セルフチェックリストの第5回目。テーマは「労働社会保険」です。

それぞれの制度に規定された要件を満たすことで、加入の義務が生じます。会社や従業員個人が任意に加入非加入を判断するものではありませんので、その要件を把握しておくことが大事です。

 

労働保険

労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。) と雇用保険の総称です。労働者を一人でも雇用していれば、業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となります(一部適用除外業種あり)。労働者とは、「事業に使用される者で労働の対価としての賃金が支払われる者」をいい、パートやアルバイトも含まれます。

 

労災保険

労災保険の対象者は、正社員、パート、アルバイトなど雇用形態や所定労働時間の長短に関わらず、すべての労働者となります。保険料は全額事業主負担となります。

 

雇用保険

雇用保険の加入要件は、下記の労働条件のいずれにも該当することです。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上の雇用見込みがあること

※季節労働者など一部例外があります。

 

社会保険

社会保険とは、厚生年金保険、健康保険の総称です。狭義の社会保険ともいいます。広義の社会保険という場合は、労働保険も含む広い範囲の概念となります。

 

厚生年金保険

厚生年金保険は、事業所単位で適用されます。

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。

適用事業所に常時使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方も対象です。

また、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、次の5要件を全て満たす方は、被保険者になります。

(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が8.8万円以上であること
(4)学生でないこと
(5)特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)

※特定適用事業所とは、同一事業主の適用事業所の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所をいいます。なお、2022年10月から、適用事業所の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所に変更となり、社会保険の適用拡大が実施されます。

※日雇い労働者や季節労働者など一部例外があります。

 

健康保険・介護保険

健康保険の適用事業所や加入要件は厚生年金保険とほぼ同じです。

健康保険の被保険者は74歳までとなります。75歳からは後期高齢者医療制度の被保険者となり、健康保険の被保険者資格を喪失します。また、40歳以上65歳未満の被保険者は介護保険に第2号被保険者として加入となります。健康保険の被保険者に扶養されている家族は、被扶養者として加入します。

 

テーマとしては労働社会保険としてまとめましたが、保険制度としては労災保険、雇用保険、厚生年金保険、健康保険そして介護保険という複数の制度を指します。また、実務上の手続きは適用事業所と被保険者それぞれについての判断や手続きが必要となります。未加入や手続き漏れなどは、従業員とのトラブルの原因となるだけでなく、労働基準監督署や年金事務所の是正指導や調査対象となる場合もあります。さらに、2022年の社会保険適用拡大に向けて、対象企業は対応に追われることになります。

各企業においては、それぞれの制度を理解し、適正な社会保険制度に加入することが求められます。

 

社労士は、労働社会保険の専門家です。加入や手続きで悩まれた場合はぜひご相談ください。