労働条件セルフチェックリスト ④法定三帳簿

2021.05.10

労働条件セルフチェックリスト第4回目のテーマは「法定三帳簿」です。
法定といわれるとおり作成保存の義務があり、違反すると労働基準監督署から是正勧告を受けたり、場合によっては罰金が科せられることになります。適正な帳簿作成のために、それぞれの作成範囲や記載事項について説明していきます。

 

労働者名簿

労働者名簿は、日々雇入れられる労働者を除き、全ての労働者について作成が必要です。
記載すべき事項は下記の通りとなります。
①労働者氏名
②生年月日
③履歴(最終学歴や前職、入社後の配属履歴など)
④性別
⑤住所
⑥従事する業務の種類(常時30人未満の事業場は省略可)
⑦雇入年月日
⑧退職年月日と及びその理由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)
⑨死亡の年月日及びその原因

保存期間は労働者の死亡・退職・解雇の日から3年となります。

労働者名簿は、必ずしも紙で保管する必要はありません。エクセルや給与労務のソフトウェア等、データで必要な情報を蓄積し、必要に応じて即時出力できる状態であれば問題ありません。賃金台帳や出勤簿についても同様です。

 

賃金台帳

賃金台帳は、全ての労働者について作成が必要です。
記載すべき事項は下記の通りとなります。
①労働者氏名
②性別
③賃金の計算期間
④労働日数
⑤労働時間数(管理監督者を除く)
⑥時間外労働時間数(管理監督者を除く)
⑦休日労働時間数(管理監督者を除く)
⑧深夜労働時間数
⑨基本給や手当等の種類と額
⑩控除項目と額

保存期間は労働者の最後の賃金について記入した日から3年です。

給与明細書の控を賃金台帳の代わりとしている会社もありますが、上記の項目を網羅していなければ賃金台帳の要件を満たさないことになります。また、項目があっても記載すべき事項が漏れていると指摘を受けることになりますので、適切に記載することが必要です。

 

出勤簿

出勤簿は、みなし労働時間制の適用対象者及び管理監督者を除く全ての労働者について作成が必要です。ただし、労働安全衛生法において、会社は労働者の健康確保を図るため労働時間の把握が責務となっていることから、全ての労働者について労働時間を把握することが求められています。
なお、出勤簿に記載すべき事項は明示されていませんが、下記の事項を記載することで労働時間の把握が可能となります。
①労働者氏名
②出勤日と労働日数
③日別の出社時刻、退社時刻、労働時間数
④時間外労働を行った日付、時刻、時間数
⑤休日労働を行った日付、時刻、時間数
⑥深夜労働を行った日付、時刻、時間数

上記の事項を把握するための書類として、出勤簿を含めた下記の資料等を作成保存することとなります。出来るだけ客観的なデータと組み合わせ、実態を把握することが肝要です。
①出勤簿、タイムレコーダー等の記録
②使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類
③残業命令書及びその報告書
④労働者が記録した労働時間報告書等

保存期間は労働者の最後の出勤日から3年です。

出勤簿は労働時間を把握する重要な資料です。労働時間は残業代の計算にも直結しますので、適正な管理が必要となります。

 

なお、賃金台帳と出勤簿の保存期間については、給与計算の記録として3年間保存する必要がありますので、実務上は該当の給与支給日を起算日として保存期間管理をするのがよいでしょう。また、法改正により各帳簿の保存期限は5年、暫定措置で3年となっています。5年保存への対応も念頭に、保存期間延長を検討することも必要となります。

 

法定三帳簿以外にも、労働条件通知書や労使協定書、年次有給休暇管理簿、定期健康診断の結果など、会社が作成し保存すべき書類は数多くあります。
社労士は、会社が作成保存すべき各種書類についての作成支援やアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。