給与明細書の読み方(後編)
2019.08.16
前回の記事では、給与明細書の読み方(前編)として「基本情報」と「勤怠項目」、「支給項目」について書きました。今回は残りの項目について書きたいと思います。
前回も書きましたが、給与明細書の構成は大きく分けて「基本情報」、「勤怠項目」、「支給項目」、「控除項目」、「差引支給額」の5項目です。その他にも「累計額」や「お知らせ欄」などがある場合もあります。
控除項目
「健康保険料」
「介護保険料」
「厚生年金保険料」
「雇用保険料」
「源泉所得税」
「住民税」
「社宅費」
「従業員食事代」
「組合費」
「財形貯蓄」
「従業員持株会拠出金」
「経費精算」など…
「健康保険料」は健康保険に加入している人から控除します。
控除する健康保険料はそれぞれの給与額から算出した報酬月額と呼ばれる金額を標準報酬月額という等級に当てはめ、その金額に保険料率を乗じて算出します。保険料は労使折半になりますので、自己負担は半額になります。
「介護保険料」は健康保険に加入している40歳以上65歳未満の人から控除します。
控除額の算出方法は健康保険料と同様です。
「厚生年金保険料」は厚生年金保険に加入している人から控除します。
控除額の算出方法は健康保険料と同様ですが、等級の数などが健康保険料と異なります。
(参考)全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料額表
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/home/g3/cat330/sb3150
「雇用保険料」は雇用保険に加入している人から控除します。
賃金総額に雇用保険料率を乗じて算出します。
健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険の加入義務については、また別の機会に書きたいと思います。
「源泉所得税」は源泉徴収税額表による金額か、電算機計算の特例から算出した金額を控除します。
扶養控除等異動申告書を提出していれば、甲欄と呼ばれる年末調整を前提とした金額が控除されます。
「住民税」は前年の1月から12月の所得金額に応じて毎年6月から控除します。
税額が少ない場合は1か月で年税額全額を控除する場合もありますが、通常は12か月の均等割りになります。均等割りにした際に100円未満の端数が出る場合は初月となる6月に含めて控除します。
ここまでの控除は法定控除と呼ばれ、法令で控除することが定められていますが、それ以外の控除は労使協定を締結することで控除することができるようになります。「社宅費」や「従業員食事代」などが該当します。また、「経費精算」として立替経費の精算を給与と一緒に振り込む場合もあります。
差引支給額
「現金支給額」は最近少なくなってきましたが、今でも原則は現金支給ということになっています。
「振込支給額」に記載された金額が、指定した給与振込口座に振り込まれます。一番最初に目が行く項目かもしれませんね。
累計額
給与明細書によっては、1月支給分からの累計額が記載されていることがあります。特に扶養の範囲内で働きたいと考えている人は、「課税支給累計額」をチェックしてください。
お知らせ欄
社内行事のお知らせや社会保険料変更通知など、会社からのメッセージが記載されることがあります。
賞与明細書
賞与支給の際に交付される賞与明細書についても基本的な構成は同様ですが、勤怠項目は賞与計算に直接影響しないので空欄となる場合が多いです。
また、社会保険料の算出方法が給与計算時と異なっています。原則として1,000円未満を切り捨てた賞与金額を標準賞与額として、この金額に保険料率を乗じて算出します。住民税も控除されません。
無いに越したことはありませんが、何らかの労務トラブルが発生した場合には、給与明細書が客観的な情報となる場合もありますので、ぜひ保管をしておいていただければと思います。
今後、WEB明細書などに形を変えることはあるかもしれませんが、給与額の計算書としての役割はもちろん、皆さんが働いた結果を通知するという役割は変わらずにあり続けると思いますので、受け取った際はちょっと働き方を振り返りつつ読んでいただければと思います。