労働条件セルフチェックリスト ⑦年次有給休暇
2021.05.31
労働条件セルフチェックリストの第7回目。テーマは「年次有給休暇」です。
年次有給休暇は、残業(時間外労働)と並んでとても身近な労働関係のテーマかと思います。最近はパートやアルバイトでも要件を満たせば年休を取得できるという認識が浸透してきましたが、改めてその要件を確認してみましょう。なお、これから記載する内容は労働基準法上の規定によるもので、会社の就業規則で法定以上の定めがあれば、その上回る内容が適用されます。
年次有給休暇とは
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して心身のリフレッシュ等を目的に付与される有給での休暇のことで、労働基準法第39条に定められています。業種や業態にかかわらず、また、正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの区分なく、1日の所定労働時間の長短を問わず、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。
年次有給休暇の付与要件
年次有給休暇が付与される要件は下記の2つです。
(1)雇い入れの日から6か月継続勤務していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
この要件を満たした労働者には、年次有給休暇が付与されます。また、最初に年次有給休暇が付与された日からさらに1年継続勤務した日に(2)の要件を満たせば、新たな年次有給休暇が付与され、以降も同様の取扱いとなります。なお、年次有給休暇は、付与日から2年間有効です。
継続勤務については、事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。たとえば、パートから正社員への身分変更や、定年退職者の嘱託再雇用などの場合も通算して継続勤務として取り扱います。
また、出勤率の算定に当たっては、業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。コロナ禍で増えている会社都合の休業日は、全労働日から除外して出勤率を算定します。
ただし、付与日数の説明でも触れますが、1年間の所定労働日数が48日未満など、所定労働日数が少ない場合は、上記要件を満たしていても、年次有給休暇は付与されません。
年次有給休暇の付与日数
雇入れの日から起算した勤続期間に対して、下記の休暇日数が付与されます
6か月勤務:10日付与
1年6か月勤務:11日付与
2年6か月勤務:12日付与
3年6か月勤務:14日付与
4年6か月勤務:16日付与
5年6か月勤務:18日付与
6年6か月以上勤務:20日付与
パートなど、所定労働日数が少ない労働者についても年次有給暇は付与されます。ただし、上記の場合よりも少なく比例的に付与され、下記の表の日数となります。なお、パートでも、週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の所定労働日数が217日以上の労働者は上記の日数が適用されます。
下記の日数が適用されるのは、週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、又は1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者に適用されます。つまり、1年間の所定労働日数が48日未満の場合は、年次有給休暇は付与されないことになります。また、隔週で1日勤務など、週所定労働日数が1日未満の場合も付与されないことになります。
週所定 労働日数 |
年間所定 労働日数 |
雇入れ日から起算した継続勤務期間 | ||||||
6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 | ||
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
年次有給休暇の取得時季
年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決まり、会社は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合(同じ日に多数の労働者が休暇取得を申請した場合など)に限り、会社に休暇日を変更する権利(時季変更権)が認められています。
年次有給休暇の時季指定義務
年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされていますが、年次有給休暇の取得を促進するための法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、年次有給休暇の日数のうち年5日について、会社が時季を指定して取得させることが必要となりました。なお、労働者が自主的に5日以上取得済みの場合は、会社による時季指定は不要です。また、年次有給休暇の付与基準日、付与日数、取得日付を記録した年次有給休暇管理簿を調製し、3年間保存することも必要となります。
年次有給休暇の賃金
年次有給休暇に対しては、原則として、下記のいずれかの金額の賃金を支払う必要があります。
(1)労働基準法で定める平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額
いずれを選択するかについては、就業規則などに規定しておく必要があります。なお、(3)による場合は、労使協定を締結する必要があります。月給者の場合は、所定賃金をそのまま支払う場合が多いと思われますので、その場合は(2)を選択することになります。
年次有給休暇の取得状況
厚生労働省がまとめた令和2年「就労条件総合調査」によると、年次有給休暇の取得状況は、1年間の付与日数(繰越分は除く)は労働者1人平均18.0日(前年18.0日)、そのうち労働者が取得した日数は10.1日(前年9.4日)となっています。取得率は56.3%で過去最高となり、5年連続して上昇しています。
しかし、コロナ禍にある現在は休業により労働日が減少するなど、取得促進が難しい状況といえます。計画的付与制度の導入や、在宅勤務と組み合わせた時間単位年休制度の導入など、今後の事業運営に合わせた年次有給休暇制度の検討が必要になるかもしれません。
社労士は、年次有給休暇の付与や取得促進に関するアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。