労働条件セルフチェックリスト ③割増賃金

2021.05.03

労働条件セルフチェックリスト第3回目のテーマは「割増賃金」です。

一般に残業代と呼ばれることが多い割増賃金ですが、必ずしもすべての残業時間が割増賃金の対象となるとは限りませんので注意が必要です。

 

割増賃金の対象となる労働時間

時間外労働時間
原則1日8時間、1週40時間を超える労働時間を「法定外労働時間」といい、割増賃金の対象となります。
例えば、1日の所定労働時間が7時間30分の会社で1日9時間勤務した場合、30分は8時間以内なので割増が必要無い法定内の時間外労働となり、1時間分が8時間を超える法定外の時間外労働となります。
例外として、1週44時間まで法定内労働時間となる特例業種や時間外労働時間の算定方法が原則と異なる変形労働時間制などがあります。

休日労働時間
労働基準法第35条で、最低でも週1回、または4週間に4回以上の休日を与えなければならないと定められている最低限度の休日のことを「法定休日」といい、仮に土日がお休みの会社で日曜日が法定休日と特定されている場合、土曜日は「所定休日」となり、この日に働いても休日労働には該当しません。
ただし、1週40時間を超えている所定休日の労働時間は、法定外時間外労働となり割増賃金の対象となります。

深夜労働時間
22時から翌5時までの労働時間を「深夜労働時間」といい、労働時間の長さに関係なく、この時間帯に労働したことに対して割増賃金が発生します。

管理監督者について
管理監督者に該当する労働者は、労働基準法で労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外となっています。
ただし、深夜労働は適用除外となりませんので深夜労働を行った場合は割増賃金の支給が必要です。
なお、管理監督者の定義については別の機会に改めて書きたいと思います。

 

割増賃金の算定方法

割増賃金率
割増賃金の割増率は下記の通りとなります。
〇時間外労働:25%割増
〇休日労働:35%割増
〇深夜労働:25%割増

なお、60時間を超える時間外労働は50%割増となりますが、中小企業は2024年4月まで適用猶予となっています。また、時間外労働時間と深夜労働時間が重複した場合は50%割増、休日労働時間と深夜労働時間が重複した場合は65%割増となります。
ただし、休日労働には時間外労働の考え方が無いため、休日労働時間が8時間を超えても35%割増となります。

 

割増賃金の算定式
月給制の場合の割増賃金の時給単価の計算方法は、下記の通りとなります。
〇所定賃金月額÷1か月の平均所定労働時間=1時間当たりの賃金額(50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ)
〇1時間当たりの賃金額×労働時間数(時間外、休日、深夜)×割増賃金率=割増賃金額(50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ)

所定賃金月額のうち、割増賃金の計算の基礎から除外できる賃金は限定的です。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
※ただし、上記名称の手当であっても、実態に関わらず一律に支払われる手当は計算の基礎から除外できませんので注意が必要です。

 

社労士は、割増賃金計算についてのアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。