最低賃金の引き上げについて

2019.08.06

先日、今年の最低賃金の目安について、中央最低賃金審議会の方針が発表されました。
全国平均で27円引き上げの901円、率にして3.1%の引き上げとなります。

この審議会の方針を目安に、順次都道府県の最低賃金が決まります。もし、この目安に沿う形で決まれば、東京都は28円引き上げの1,013円になる見通しとのことです。しかし、率で見ると地方の伸び率が大きいため、インパクトは地方拠点の事業所の方が大きいかもしれません。

新聞紙上を賑わせた統計手法の懸念は払しょくされていませんが、2018年の勤労統計の名目賃金伸び率が平均1.4%であることを考えると、最低賃金付近で働く労働者の割合が増加することが考えられます。

このように賃金の底上げが進む中で、どのように働くのか、どのように働いてもらうかについて、このタイミングで改めて考える必要があるのではないかと思います。改定は例年10月に行われますが、自社の賃金体系が最低賃金に抵触しないかについては事前に検討が必要になります。

労働者としては、時給が上がることにより時間当たりの収入増となりますが、扶養控除内での勤務を想定している場合には、勤務時間の調整が必要になります。そのまま収入の増加を目指すのか、収入総額を維持したままで時間を有効に使うのかの選択で、これからの働き方を考えるきっかけになるかもしれません。

事業所としては、直接的な人件費の増加と、賃金体系のバランスを見直す必要性に迫られるかもしれません。人件費には社会保険料の増加分も見込まれますので、キャッシュ・フローへの影響は事前に把握しておきたいところです。また、賃金体系のほか、人員の配置や構成、バランス、生産性といった部分については経営全体に影響を及ぼしますので、慎重な検討が必要です。

ただ、労働者と事業所の思惑が一致すれば良いのですが、往々にしてそうはならないのが難しいところです。それでも、対応を検討することで落としどころも見えてきますし、その時点での最善の判断につながるのではないかと思います。

今年の10月は消費税率の変更のタイミングでもありますので、家計においても、事業計画においても、いま一度の見直しのタイミングと捉えてみてはいかがでしょうか。