年次有給休暇の年5日の時季指定義務
2019.07.22
4月から順次スタートしている働き方改革関連法案ですが、現在最も多くの方が身近に感じる改正点が年次有給休暇の年5日の時季指定義務だと思います(労働基準法39条第7項)。規模も業種も関係なく、すべての事業所でスタートしています。
2017年の年次有給休暇の取得率は51.1%、取得日数は9.3日でした(厚生労働省平成30年就労条件総合調査)。取得率が上がらない理由としては仕事の忙しさだけでなく、有給休暇の取得を言い出しにくい職場の雰囲気があるとも言われています。
今回の法改正で、一定の条件のもと、年次有給休暇の取得を義務化することで、取得率、取得日数の底上げを図ろうというものです。
対象となるのは、年次有給休暇が10日以上付与される労働者ということになっています。管理監督者や有期雇用の労働者も含まれます。1回の付与で10日以上の場合が対象となりますので、初年度の付与が7日、次年度の付与が8日というように、累積で10日となるような場合は、今回の時季指定義務の対象とはなりません。
まず、年次有給休暇の発生要件を確認しましょう。
・雇入れの日から6か月継続して雇用されている
・全労働日の8割以上出勤している
この2点をクリアしていれば、有給休暇を取得することができます。
付与日数は正社員などフルタイム勤務であれば、継続勤務6か月で10日付与となります。
所定労働日数が少ないパートタイム勤務の方は、所定労働日数に応じた比例付与となります。例えば、週の所定労働日数が4日の方は継続勤務3年6か月で、同3日の方は5年6か月で10日付与となります。
対象となる有給休暇は2019年4月1日以降に付与された有給休暇で、付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して取得させなければなりません。
では、年5日の有給休暇をどのように時季指定すれば良いのでしょうか。
時季指定の方法は、個々の労働者の意見を聴取した上で、できる限り希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう務めなければならないとされています。事前にヒアリングを実施したり、計画表を作成して意見を求めるなどの手順を踏むことが考えられます。
ただし、個別に請求して取得した日数や、職場の計画年休で取得した日数があれば、時季指定の日数から控除することとされています。たとえば、労働者からの請求で2日取得し、さらに職場の計画年休で2日取得していた場合は、1日の時季指定で足りることになります。
実際の運用には、職場ごとにヒアリングの方法や時季指定のタイミング、日数の管理方法や変更の際の手順など、詳細な運用ルールの検討が必要になります。さらに、時季指定の実施について就業規則への規定(労働基準法89条)や、年次有給休暇管理簿の作成保存(労働基準法施行規則第24条の7)などの対応も必要となります。
年次有給休暇は、多くの人にとって、とても身近なテーマだと思います。今回の法改正を機に、年次有給休暇が取得し易い雰囲気を醸成することで、働きやすい職場環境の整備や現在の仕事の進め方を見直すきっかけにすることもできるのではないかと思います。