労働条件セルフチェックリスト ②36協定
2021.04.19
労働条件セルフチェックリストの第2回目のテーマは「36協定」です。
毎年届出が必要な手続きのため、総務や事業所管理のお仕事をされている方にはなじみのあるテーマかも知れません。
36協定はなぜ必要か?
正式名称は「時間外労働・休日労働に関する協定届」で、労働基準法第36条に定められていることから、通称「36協定」と呼ばれています。
この36協定がなぜ必要かというと、この協定を労働者代表と締結して労働基準監督署に届出ていないと、会社は労働者に残業(≒時間外労働・休日労働)させることができないことになっているからです。
労働基準法では、労働時間は原則1日8時間以内、1週40時間以内とされており、これを「法定労働時間」といいます(労働基準法第32条)。また、休日は原則毎週少なくとも1回与えることとされており、これを「法定休日」といいます(労働基準法第35条)。これらの時間や回数を超える労働をさせる場合に、36協定が必要となります。
もちろん、残業が無い会社であれば、この協定は必要ありません。ただし、上記でも書きましたが、それぞれの会社でいう「残業」とこの協定でいう「時間外労働・休日労働」は必ずしも同じではないので、注意が必要です。
例えば、1日の所定労働時間が7時間30分で土日がお休み(うち、日曜日が法定休日)の場合を見てみましょう。
日曜日 法定休日
月曜日 7時間30分
火曜日 7時間30分
水曜日 7時間30分
木曜日 7時間30分
金曜日 7時間30分
土曜日 所定休日
この場合、月曜日から金曜日にそれぞれ30分の残業をしたとしても、1日8時間を超えていないので36協定が必要な時間外労働とはなりません。もちろん、この1日当たり30分の時間外労働に対する残業代は必要になりますが、25%以上の割増賃金とする義務はありません(会社によっては就業規則で割増賃金の対象としている場合もありますが、これは法令以上の対応となります。割増賃金については次回お話したいと思います。)。
それでは、土曜日に出勤した場合はどうでしょうか。会社の休日に出勤するので休日労働に該当しそうですが、この事例では法定休日は日曜日となっていますので、36協定の休日労働には当たりません。この場合の土曜日の休日を一般に所定休日と呼び、法定休日と区別します。
仮に、月曜日から金曜日まで毎日7時間30分勤務だった場合、累計で37時間30分となります。この週の土曜日に3時間勤務した場合、1日当たりでは8時間以内ですが、1週で40時間30分となり、30分が時間外労働となります。休日労働には当たりませんが、30分が時間外労働に該当するため、事前に36協定を届出ていなければならないということになります。
なお、法定休日を特定する場合は就業規則で定めますが、定めのない場合は通達(昭和63年1月1日基発第1号)により日曜日を起算とした1週間で考えることになります。
時間外労働の上限規制
労働基準法の改正により、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)から、時間外労働に上限規制が規定され、これに違反した場合には罰則(6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が適用されることとなりました(一部、適用猶予の事業や業務があります)。
改正のポイントは以下の通りです。
〇時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。
〇臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・時間外労働は年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、かつ2〜6か月平均80時間以内
とする必要があります。
〇原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度となります。
ここでいう時間外労働とは、最初に記載した「法定労働時間」を超える労働時間、休日労働とは「法定休日」の労働時間となります。
また、36協定は労働者の過半数で組織する労働組合(過半数労組がない場合は、労働者の過半数代表者)と締結する必要があります。
さらに、有効期間は1年以内で、労働基準監督署への届出が起算日を過ぎてしまうと、届出日より前の期間は無効となりますので、注意が必要です。
なお、労働基準監督署に届け出る書類を「協定届」、実際に労使で締結する書類を「協定書」といい、それぞれ別の書類となります。しかし、「協定届」を「協定書」とすることは差し支えないという通達(昭和53年11月20日基発642号)がありますので、兼ねる場合は届出した「協定届の写し」を「協定書」として保管する必要があります。
社労士は、36協定の作成についてのアドバイスも行っておりますので、悩まれた場合はぜひご相談ください。