就業規則の不利益変更

2019.10.21

就業規則の見直し

就業規則は法改正対応以外にも随時見直しを行い、事業の実情に合わせることが大切です。多くは労働環境の改善に向けて条件が改善する場合が多いかと思いますが、場合によっては労働者に不利益な変更となる場合があります。

 

不利益変更は可能か

原則として一方的な就業規則の不利益変更は認められません。ただし、その不利益変更に合理的な理由があれば変更が認められるとされています(労契法第9条、第10条)。個別に不利益変更の合意を取り付けることで変更をすることも可能ですが、対象となる労働者すべての合意を得るのは困難と言えます。

そこで、会社はその不利益変更に合理的理由があることを以て変更手続きを進めることになります。

 

不利益変更の合理的な理由とは

一般に、就業規則の不利益変更の合理性は以下の要件に照らして判断されます。

・労働者が受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との協議の状況

労働者の労働条件を不利益にするより前に、役員報酬や経費削減など他の方策を十分講じていたか、その上で必要な範囲内の変更であるか、代替措置や軽減措置、経過措置などの緩和策が講じられているか、同業他社の状況と比して不当に低い条件となっていないか、経営状況の回復に応じた労働条件の回復措置や時限措置の設定がされているかなどの具体的な対応が検討されます。そして、労働組合や労働者の過半数代表との協議や十分な説明がなされているかについても問われることになります。

仮に労働者代表の反対意見が付された場合でも、手続き的には就業規則の不利益変更は可能です。しかし、これが争いとなった場合には上記の要件に照らしてその合理性が問われることになり、場合によっては就業規則の変更が無効となる可能性もあります。

 

労使間の誠実な協議が鍵

就業規則は変更のタイミングだけで短期的に争われるものではなく、制定された後の働き方を継続的に規定します。使用者側の不利益変更の回避努力はもちろん、労働者側にも経営状況の打開向けた対応が望まれます。不利益変更に踏み切る企業の経営状況は危機的な状況である場合が多いと想定されます。そのような状況を労使が協力して乗り切るために、十分に話し合った上で労働条件の変更がなされることが肝要です。

 

弊所では就業規則作成や変更のお手伝いをしております。有給休暇の年5日取得義務化に伴う計画年休条項の追加やテレワーク勤務規程、ボランティア休暇規程の作成など、職場に合わせた就業規則の作成を支援しております。また、労働基準監督署への届出も電子申請の利用が可能になりましたので、迅速な届出対応が可能です。