労働条件通知書の電子交付
2019.09.11
2019年4月から、労働条件通知書の電子交付が可能となりました。(労働基準法施行規則第5条第4項)
これからは、PDF形式などで作成した労働条件通知書を電子メールで送信することで、労働条件の明示が完了することになります。
今までは書面での交付とされていましたので、ペーパーレス化や事務処理の省力化にもつながります。受け取る側の労働者としてもデータが残るので、物理的な紛失リスクが低減するメリットがあります。
電子交付の条件としては、以下の点をクリアする必要があります。
1.労働者が電子交付を希望していること
2.FAXや電子メール等の受信者を特定できる電気通信の方法によること
3.労働者が受信した記録を出力して書面を作成できること
上記の条件を満たさない場合は、今まで通り書面での交付が必要になります。
「1.労働者が電子交付を希望していること」については、予め同意書を取得したり、入社前のヒアリングなどで希望を確認して記録しておくなどの対応が考えられます。
「2.FAXや電子メール等の受信者を特定できる電気通信の方法によること」については、電子メールにPDFの労働条件通知書を添付する形式の交付が多いかと思われます。クラウドなどにアップロードする方法などの場合は、当該労働者のみがアクセスできる個人フォルダへのアップロードなどが想定できます。
なお、施行規則ではFAXが電気通信の例として先頭に挙げられていますが、一般に家庭用FAXは家族共用の場合が多い状況を考えると、受信者の特定という部分で微妙な感じも個人的にはします。
「3.労働者が受信した記録を出力して書面を作成できること」については、印刷が可能な状態のデータを渡していれば良いので、あまり気にする必要は無いかと思います。
自宅にプリンターがあればそのまま印刷できますし、もし自宅にプリンターがなくてもコンビニ等で出力することも可能だと思います。実際に印刷するかしないかは労働者に委ねられています。
労働条件の明示は会社側の義務となっていますが、実態として労働条件通知書を作成交付していない場合も多々あるようです。違反した場合には30万円以下の罰則規定があります。(労働基準法第120条第1項)
認識の相違からのトラブル発生を未然に防ぐためにも、労使がお互いに労働条件を確認することは非常に重要です。僅かでも交付のハードルが下がったわけですので、これを機に労働条件の明示に関する業務フローを見直してみるのも良いかもしれません。